ひとりSim.アカデミー

MSFS2020を学びます。

F1中継の難解用語を学ぶ

このブログはMSFS2020の記録がメインだが、F1のことを書いてみる。

ホンダがF1にエンジンを提供し始めた2015年からF1をテレビ観戦し続けている。アイルトン・セナの時代から20年以上ぶりの復活観戦だった。ところがレ−スのフォーマットが複雑になり、さらに解説の川井氏が「ついてこれる者は来い!」とばかり専門的な解説を自分のペースで乱射する相当マニアックなテレビ中継に当初は戸惑った。解説が難しすぎて説明になっていないのだ。

それでもこれまで長く付き合ううちにそこそこ理解できたこともある。そこで、中継で頻出する専門用語を決勝レ−スの進行に沿って整理するので、初心者の方に参考にしていただきたい。これからは日本人ドライバーの角田が大化けする期待もあり、ホンダがレッドブル陣営にエンジンを供給する2025年度までは楽しみが続く。

 

---- F1中継の難解用語---- 「S」の数は難易度

【タイヤコンパウンド】「S」

F1のタイヤはピレリ社が硬めから柔らかめのC0(最硬)からC5(最柔)までの6種類のコンパウンドのタイヤを支給している。そしてサ−キット特性に合わせてレ−ス会場毎に3種類を選んで、硬い方から白のペイントをつけてハード、黄をミディアム、赤をソフトとして規則で決められたセット数が支給される。

「このレースではハードがわを選んでいますね」と言うことがあるが、「皮」でなく「ハード側」である。

硬いタイヤは、タイヤ温度が上昇して性能を発揮するまで時間を要するが長持ち。柔らかいタイヤはすぐに性能を発揮するが寿命が短い。

 

【ストラテジー】【ワンストップツーストップ】【プランAプランB】「S」

ストラテジー(レース戦略)は様々な場面で出てくる用語。レ-ス全体としてはタイヤ交換のスケジュールがストラテジーの中心となる。

決勝ではハ−ドかミディアムのどちらかを必ず使用する、タイヤ交換を1回以上行う、二種類以上のタイヤを使用する義務がある。スタート時のタイヤに三種類のうちどれを選び、タイヤ交換を何周目に行い、交換は一回か二回かなど様々なストラテジー(レースプラン)を組立てて各チームはレースに臨む。雨のレースではタイヤ支給や交換義務などが異なる。

支給されたタイヤ数、予選で使用した種類と数、残りの種類と数をWEBで確認しながら川井氏は各チームのプランを予想解説している。用語としては簡単だが、内容はチ−ムのみぞ知る「S」。

 

【セクターワン・セクターツー・セクタースリー】「S」

サ−キットの全区間を三つの区間(セクター)に区分し、スタートからワン、ツ−、スリーとする。セクター毎の区間タイムや一周毎のタイムを計測している。

 

【パープル全体ベスト】【グリーン自己ベスト】「S」

川井氏は各車の順位をWEBで確認している。そこには直近の一周のタイム、セクター毎のタイムが表示され、全車中のトップタイムは紫、ドライバー毎のレース内のトップタイムは緑で色分けされる。

 

ダウンフォースとドラッグ】「S」

高速で安定して走行するために、車体の内側の構造や外側の空力パーツにより車体を下側に押さえつける力(ダウンフォース)を発生させ、タイヤが路面に張りつくようにしている。不必要なスリップを軽減し、タイヤの減りや過度な温度上昇を抑え、長持ちするらしい。

「ウィリアムズのマシンはダウンフォースが少ないですから、トップスピードは上がりますよね浜島さん!」と川井氏が使う。ドラッグは車体全体の空気抵抗を指す。

 

【DRS圏内】「SS」

追い抜きが多いレ−ス展開を期待して、最高速が上がるようするための装置(DRS)を使用できる直線区間がDRSゾーンとして定められている。区間前に設けた計測地点で前車と1秒以内であれば、直後のDRSゾーンでリアウィングを開いて空気を素通りさせ、ドラッグを軽減させて最高速を上げることができる。区間が終わると再び閉じる。

後続車が1秒以内に追ってくると、抜かれる危険が迫っているということになる。

 

【レーシングアクシデント】【おとがめなし】「S」

他車と接触したり邪魔をして自車が優位になることは許されず、そのような行為は審議対象となり、判定に応じてペナルティーの対象となる。しかし二台が競争しながらコ−ナ−に進入すれば、接触したり相手が行き場を失うことは頻繁にあり、審議の結果レ−ス上の避けられないアクシデントしとて不問にされる場合もある。

その結果は中継画面にも表示され、不問の場合は「おどがめなし、ですね」と川井氏が嬉しそうに解説する。

 

【トラックリミット違反】「S」

サ−キットの縁石や路肩のラインをはみ出して走行した時、特定の場所の場合はその周回のタイムは記録として認められず、さらにこれを繰り返すとペナルティーの対象となる。

 

【グレーニング】【ブリスター】【デグラデ−ション】【トラックエボリューション】 「S」

周回を重ねるとタイヤの過熱や路面との摩擦により、タイヤの表面がグレーニング、ブリスターなどと言われる変質をきたし、路面のグリップ力が低下した結果、ラップタイムが次第に遅くなる。ラップタイムの低下の度合いをデグラデ−ションと呼ぶ。

一周毎に何秒低下するかは、タイヤのコンパウンドやサ−キットによって、さらにクルマや残燃料の重さによって異なる。またレ−ス開催が少ないサ−キットは路面の細かな凹凸があるが、クルマが周回を重ねてタイヤのゴムが路面に張り付いてグリップが次第に増し、デグラデ−ションが緩やかになるようだ。

いずれにしても、タイヤが消耗しにくいクルマは戦略の幅が広がる。金曜日からのフリ-走行でロングランを重ねてセッティングを煮詰めたり、タイヤコンパウンド毎のデグラデ−ションを把握して決勝に臨んでいる。

 

【ピットストップデルタ】【VSCデルタ】「SSS」

タイヤが消耗し交換のためにピットに向かうと、ピットレ−ンの入り口で減速、タイヤ交換の停止2〜3秒、再スタートし徐行でピットレ−ンの出口を通過して加速しコ−スに合流しレ−ス再開となる。この時、ピットインしないで走り続けた仮想の自車より遅れた位置に後退する。この標準的な遅れ時間がピットストップデルタ。サ−キットによってピットレ−ンの長さも変わるので、このデルタも20秒から25秒くらいで変化する。

ピットイン直前の後続車の時間差から、どのクルマの後ろに後退するかが重要。「このサ−キットのデルタは22秒ですから、今入ると20秒後ろのオコンの後になりますね。」と川井氏が解説する。

VSC中は各車が速度を落として周回するので、その間にピットストップした時のロスタイムは通常のピットストップより少なく、15秒程度まで縮まる。後車を15秒以上引き離していれば、VSC中であればピットストップしてもその車の前のポジションで復帰できる。

「マックスとルクレールの差は18秒ですから、VSCウィンドウの外に追いやりましたね!」と川井氏は解説する。素人は???である。

SC中は各車の速度がさらに遅いので、ピットストップのロスタイムはもっと少なくなるがここでは省略。

 

【アンダーカット】【カウンターを打つ】【ステイアウト】「SSS」

レ−スが進むとタイヤが消耗してラップタイムが落ちてくる。コンパウンドやクルマによって落ち方の程度は異なり、各車の落ち方を見ながらピットインのタイミングを探る。逆にこれを利用して他車を逆転して順位を上げることもできる。

前車に対して、「このタイヤで走り続けてもタイムが落ちて抜けない」「違うコンパウンドのタイヤに早めに換えるとそのタイヤで長く走ることになるが、そのコンパウンドだと自車はタイムの落ちが少ないので長い目で見ると有利」などと判断し、ピットインして前車との間隔はさらに20秒後方に後退するが、交換後のタイヤで早く走って前車との時間を詰めておく。

さらに前車がタイヤ消耗によりタイムが落ちて20秒以内に詰めることができれば、前車がピットイン後は自車の後ろで復帰することになる。実際に追い抜かずに、タイヤ交換の戦略で追い抜くことになり、「アンダーカット成功しましたね!」と川井氏が嬉しそうに解説する。前車がピット作業に時間を要せばさらにチャンスは広がる。

アンダーカットを目論む自車のピットインに対抗して、次の周回で前車がピットインし、前の位置で復帰されること多く、「カウンター打った、成功!」と解説が入る。カウンターを打たずに(ピットインせずに)そのまま前車が周回する時は、「ステイアウトですね浜島さん!」となる。

このあたりの解説は川合氏の独壇場だ。

 

【オーバーカット】「SSS」

「このタイヤはうまく走ればデグラデ−ションを少なくでき、交換を遅らせて長く走れる」と判断した時、前車がピットインしてもステイアウトして周回を重ね、残りの周回数が少なくなった時点でタイヤ交換し、後方の位置から前車より周回数が少ないフレッシュなタイヤで追い抜きを重ねること。ハ−ドからミディアムへの交換パターンが多い。

スタートダッシュ直後の混乱を硬いタイヤでうまくかわし、タイヤを労わって周回を重ねる忍耐とクルマの性能が噛み合ったときに実現する。

「角田くんはステイアウトしてタイヤマネジメント。オ−バ−カット狙いですね、浜島さん!」となる。

 

【終わりに】

川井氏は古館アナ時代に「川井ちゃん」と呼ばれてピットリポートとかしていたと記憶しているが、当時はヤセ型でいじられキャラではなかったか。現在の解説は「ドS」と言われているが、ひと欠けらの悪気もない、子供が大人になったような人物だ。

自分だけの言語で生きているので、アナウンサーの言ったジョ−クが全く通じないのも、最近は面白い。「芸」として完成された解説ぶりである。私自身も彼に飼いならされたのか、最近は親しみを感じてしまうこともある。